連載企画【第5話】見えないコストの罠:「儲かった!」と思ったら赤字だった関税の話

輸入代行業者という心強いパートナーを得て、僕はついに本格的な仕入れに踏み切った。リサーチを重ねて見つけ出したニッチな収納ケース100個。代行業者を通じてスムーズに発注を終え、数週間後、商品は無事にAmazonの倉庫へと納品された。

売れ行きは、想像以上だった。FBA(※詳細は次回解説)のおかげで、注文が入ると自動的に商品が発送されていく。スマホに届く「注文確定」の通知が、こんなにも嬉しいものだとは。

「ついに俺も、自分の力で稼げるようになったんだ!」

売上グラフが右肩上がりに伸びていくのを眺めながら、僕はすっかり有頂天になっていた。缶ビールは、いつしか発泡酒に変わっていたけれど、味は格別だった。

しかし、その幸福感は、月末に代行業者から届いた一通の請求明細によって粉々に打ち砕かれる。

僕は明細を見て、血の気が引くのを感じた。商品代金、代行手数料。それは想定内だった。だが、その下には「国際送料」「関税」「輸入消費税」「通関手数料」…見慣れない項目がずらりと並び、合計金額は僕が想定していた仕入れ総額を大幅に上回っていた。

慌てて利益計算をやり直す。売上から、Amazonの販売手数料と、この請求額を差し引くと…。手元に残る利益は、ほとんどゼロ。いや、梱包資材などの雑費を考えれば、わずかに赤字だ。

「儲かっていた」のではなく、「儲かっているように見えていただけ」。僕のビジネスは、どんぶり勘定の上に成り立つ、砂上の楼閣だったのだ。

■解説①:中国輸入にかかる「全てのコスト」を把握する

これは初心者が必ず通る道であり、最もビジネスを頓挫させやすい罠です。物販ビジネスの利益は、以下の式で計算されます。

利益 = 売上 – (商品原価 + 全ての経費)

この「全ての経費」を正確に把握することが生命線です。中国輸入では、主に以下のコストが発生します。

  1. 商品原価: アリババなどで支払う商品そのものの代金。
  2. 中国国内送料: 工場から代行業者の倉庫までの送料。
  3. 代行手数料: 輸入代行業者に支払う手数料。
  4. 国際送料: 中国から日本までの送料。重量や輸送方法で変動。
  5. 関税: 商品の種類によって税率が異なる。ゼロの場合も。
  6. 輸入消費税: (商品代金+国際送料+関税)に対して課される日本の消費税。
  7. 通関手数料: 配送業者が通関手続きを行うための手数料。
  8. Amazon関連手数料: 販売手数料(売上の約15%が目安)やFBA手数料など。

これらのコストを、仕入れを判断する前に、専用の利益計算シート(Excelやスプレッドシートで作成)にすべて入力し、シミュレーションする癖をつけなければなりません。

■解説②:「16,666円まで免税」の罠

「個人輸入は16,666円以下なら関税がかからない」という情報を鵜呑みにしていると、大きな失敗をします。これはあくまで**「個人使用目的」の場合です。利益を得る目的で輸入する「商用輸入」は、原則として金額にかかわらず課税対象**となります。我々が行うのはビジネスですから、必ず関税と輸入消費税はかかるものとして計算に組み込む必要があります。