販売事業者であれば、どんな会社でも在庫管理は行っていることでしょう。
在庫管理は、ただ在庫数を把握することがゴールではありません。しっかりと目的を持ち、PDCAを回すことで利益を上げるための基礎となる非常に重要な活動であり、どれだけしっかりできているかによって業績に直結するといっても過言ではありません。
目次
そもそも在庫管理とは
まず、「在庫」とは
「在庫」とは、販売業であれば販売前の商品のみを指します。メーカーであれば、製造前の原材料なども「在庫」となります。要するに、今後利益を得るための対価として用意している物品が在庫と呼ばれるわけです。
在庫管理とは
「在庫管理」とは”商品を最適な状態で必要量供給できるようにするために在庫の状態・量を維持する活動”のことです。
では、なぜそのような面倒なことが必要なのでしょうか?それはひとえに、「利益を上げるために重要だから」です。
それでは、適切な在庫管理が利益向上につながる3つの理由を見ていきましょう。
在庫管理の目的は?適切な在庫管理が利益向上につながる3つの理由
1.機会損失が減り売上が向上する
せっかく消費者が買おうと思ったのに品切れだと、本来得られるはずだった売上を損してしまうことになりますよね。これを「機会損失」と呼びます。
一定期間でどれだけ在庫が減っているか、在庫を確保するまでにどれくらいの期間がかかるかを把握しておかないと、適切な在庫数を維持できず、機会損失が発生する可能性が高くなります。
これを防ぐため
・一定期間でどれだけ在庫が減るか
・仕入れるまでにどれだけ時間がかかるか
を把握、予測するのが在庫管理です。
2.不良在庫が減り売上が向上する
在庫は売れないと仕入れにかかった費用がそのままマイナスになるのは当然ですよね。そのため、あまり売れない商品は仕入れをストップしたり、売り切るために価格を下げたりする必要があります。
しかし、なんとなく「売れ行きが悪いな」と感じとることができても、ではどれくらい仕入れを減らすべきなのか、今すぐに価格を下げるべきなのかなどの判断には困るのではないでしょうか?
正確な判断するためには在庫管理によって過去の売れ行きを定量的に把握し、今の価格で売り切れそうなのか、売り切れるとしたらどれくらいの期間がかかるかを概算することが重要です。
これによって正確な在庫調整、価格調整ができ、不良在庫を減らし売上向上が見込めます。
3.消費期限や使用期限が近いものを販売しないようにする
商品によっては消費期限や使用期限があります。同じ商品でも仕入れた時期によって異なるため、しっかり管理できていないと期限が近いものを販売してしまい、お客様に迷惑がかかってしまうことがあります。
そのため、商品の消費期限や使用期限ごとに在庫を管理し、期限が近いものから販売したり、期限が近いものは処分したりといった対応を行うのも、在庫管理の非常に重要な活動の一つです。
お客様に迷惑をかけてしまうことはそれ自体が大きな問題ですし、利益の面から見ても、クレームなどで一度信用を失うと、不良在庫よりも大きな損失となるため、最も大事な目的といっても過言ではないでしょう。
EC・ネットショップに特有の在庫管理の問題
ECにおける問題
もしあなたがインターネットで服を注文したことがあるとしたら、「申し訳ございませんが、他の店舗でたまたま同時に購入され、売り切れてしまいました。」と謝罪のメールを受け取った経験があるかもしれません。最近はこのような事態は減ってきましたが、EC黎明期はしばしばみられる光景でした。
問題の原因-実在庫と理論在庫
実在庫とは、実際に倉庫に存在する在庫のことです。理論在庫とは、注文データや仕入れデータを基に集計される在庫数のことです。
ある商品を100個仕入れ、A店で20個、B店で10個売れたから現在の全体の在庫は70個だ。と算出されたものが「理論在庫」ということです。
理論在庫は、実際に在庫数が変動した後にそれを集計して初めて最新の数値に更新されるため、タイムラグがあります。
リアル店舗であれば、欲しい商品を実際に確保してから支払いを行うことがほとんどであるため、在庫がない商品を注文するということは起きえませんが、ECでは消費者が見ているのはあくまでサイト上の在庫表示であり、理論在庫です。実在庫はすでに無くなっていることもあるのです。
ECにおける売り越しの解決策
実在庫以上の注文が入ってしまうことを「売り越し」と呼びます。売り越しを防ぐには店舗ごとに在庫を用意する必要がありますが、そうすると売り切れが起きないように在庫を多く抱えるか、在庫をギリギリの数だけ確保して機会損失にある程度目をつぶるかのどちらかになります。後ほど説明する「クロスマ」のようなツールを利用する必要があります。
在庫管理の方法(倉庫別)
はじめに言ってしまうと、ある程度大きな利益を目指す企業であれば、在庫管理を行うには在庫管理ツール、在庫管理システムの導入は必須です。
個人の副業や、超高額な1点物の商品を少量だけ扱うビジネスでなければ、紙の帳簿やエクセルでの管理はすぐに限界が来ます。そのため、基本的には在庫管理ツールを利用する前提で記載しています。
リアル店舗の場合はPOS、ECの場合はECサイトと在庫管理システムをつなぐことによって、リアルタイムで在庫管理システム上の在庫数を変更することができます。
自社倉庫
商品一つ一つにラベルを貼ったり、ラベルを貼った棚に陳列するなどして、在庫数をいつでも確認できるようにしたうえで、在庫管理システム上に在庫数を入力し管理しましょう。
陳列する際は、ロケーション管理(倉庫内のどこに何を置くかのルールのもと管理すること)が重要になります。
・売れ行きに応じて取り出しやすい場所に並べる
・商品のカテゴリごとにまとめて並べる
・賞味期限、利用期限がある場合は早い順に並べる
などの点を踏まえルールを定めましょう、
自社倉庫で保管している場合、かなり自由に在庫管理ができます。が、ルール決めや在庫管理システムの導入のための準備など煩雑な業務が発生する点、在庫数が多くなるにつれて倉庫の賃料や土地代、管理にかかる人件費も大きくなってしまうことがデメリットです。
他社倉庫(3PL、フルフィルメント)
自社倉庫のデメリットを解消するためには、倉庫業者の貸倉庫サービスを利用するのも一つの方法です。
他社倉庫に委託する物流の形態、または他社倉庫自体のことを3PL(3rd Party Logistics)と呼ぶことがあります。また、ECサイトでの受注確認から倉庫での管理から梱包、発送までまとめて代行してくれる業者もあり、そういったサービスを「フルフィルメントサービス」と呼びます。Amazonやヤマトが有名です。
3PL、フルフィルメントともに様々な業者が参入しており、自社が望む形での在庫管理ができるかどうかは業者によります。
他社倉庫を利用する場合、その倉庫と対応している在庫管理システムを選ぶ必要があるので注意しましょう。
他社倉庫を利用する場合、在庫管理システムとの連携ができさえすれば、陳列や保管に関してはお任せすることができるため、在庫管理の手間を大きく省くことができるでしょう。
在庫管理システムについて
在庫管理システムは非常に多くの種類がありますが、細かい機能の違いの前に、目的が大きく2つに分かれることを理解する必要があります。
それは、実在庫の管理が目的か、理論在庫(販売していい在庫数)の管理が目的かの違いです。※実在庫と理論在庫の違いはこの記事の少し上、コチラをご覧ください(リンク)。
実在庫を管理するシステム(倉庫管理システム)
倉庫内在庫数をカウントし、記録、管理するためのシステムがこのタイプで、「倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)」と同義です。多くの場合、検品のためのバーコードリーダーと管理のためのソフトウェアがセットになっています。
在庫を管理するためにはまず実在庫の把握が必須ですので、前述のとおりよほど在庫数が少ないのでなければ、このシステムも必須となります。
ただし、多くの3PL、フルフィルメントサービスでは倉庫管理システムも一体になっており、サービスサイト上で実在庫の数が確認できるようになっています。そのため、3PLやフルフィルメントサービスを利用するなど、必ずしも自身で単独の倉庫管理システムを選んで契約しなければならないわけではありません。
代表的なシステム
・ロジザードZERO
・Aladdin Office
・ロジクラ
理論在庫を管理するシステム
実在庫の管理だけでは、前述のような売り越しの問題が起きる可能性が高く残ってしまいます。そのため、どこかの店舗で注文が入った際、その情報を基に理論在庫(販売していい在庫数)を算出するのがこのタイプです。
多くのシステムはECサイトに理論在庫を自動で反映させる機能を備えているため、このタイプの在庫管理システムを導入すれば、売り越しを防ぐことができ、また、複数店舗の在庫を分けて用意しておく必要がないため過剰在庫も防止できます。
代表的なシステム
・ネクストエンジン
・クロスマ
・クロスモール
まとめ
いかがでしょうか。在庫管理は単に在庫数を把握することがゴールではなく、在庫状況を分析し、利益を上げるために重要な活動ということが分かったと思います。必須となる在庫管理システムは適切なものを選び、自社の利益を上げるための在庫管理を実現していきましょう。