【新連載企画】元会社員・2児の父の「脱サラ」奮闘記 〜月商100万円のAmazonセラーになるまで〜【第1話】プロローグ

深夜のキッチン、ため息と缶ビール。副業を探し始めた夜

シン、と静まり返った深夜のキッチン。リビングのソファで眠ってしまった妻と、隣の部屋ですやすやと寝息を立てる二人の子供たちを起こさないよう、抜き足差し足で冷蔵庫を開ける。

プシュッ、という小気味よい音とともに、今日の仕事を終えた証である缶ビールを流し込む。ぬるい照明だけが照らすテーブルの上には、昼間、郵便受けから抜き取ったまま放置していた給料明細。見なくてもわかるその数字に、僕はまた深いため息をついた。

35歳、会社員。愛する妻と、5歳になった長男、そして半月前に生まれたばかりの長女。幸せなはずだった。いや、もちろん幸せだ。しかし、2人目の子供が生まれてからというもの、僕の心は漠然とした、しかし確かな重さを持つ「不安」に支配されていた。

ミルク代、おむつ代、将来の学費…。増えていく支出。それなのに、給料明細の数字は数年前からほとんど変わらない。会社に行き、上司の指示通りに働き、残業をして帰ってくる。そんな毎日を繰り返しても、生活は楽になるどころか、むしろ少しずつ、確実に首が締まっていく感覚。

「このままで、本当に家族を守っていけるのだろうか?」

子供たちの無邪気な寝顔を思い浮かべるたび、その思いは鉛のように重くのしかかってくる。

解説①:なぜ、今「副業」が必要なのか?

この物語の主人公が感じている不安は、決して特別なものではありません。現代において、会社からの給料一本に家計のすべてを依存することは、それ自体が大きなリスクとなり得ます。

  • 終身雇用の崩壊と昇給の停滞
  • 会社の業績や方針に左右される不安定さ
  • 病気や介護など、不測の事態への備え

会社という組織に属していても、個人の生活までは保障してくれない時代。「自分の力で稼ぎ、収入の柱をもう一つ作る」という考え方は、もはや一部の特別な人が行うものではなく、誰もが真剣に考えるべきテーマになっているのです。

あてもなくスマホを見つめる

静寂の中、僕はスマホの画面をつけた。震える指で打ち込んだ文字は、「副業 稼ぐ」。

画面には、無数の情報が溢れかえっていた。

「未経験から月収50万円!Webライター」

「これからの必須スキル!プログラミングで稼ぐ」

「スマホ一つでOK!動画編集」

どれも魅力的に見えた。しかし、胸の奥で何かが違うと囁く。

今の僕には、本業がある。帰宅すれば、幼い子供たちの世話と家事で、まとまった学習時間を確保するのは至難の業だ。クライアントがいて「納期」が決まっている仕事は、子供の急な発熱などで対応できなくなるかもしれない。

僕が求めているのは、一夜にして大金を稼ぐ魔法じゃない。もっと着実で、持続可能な、もう一つの「収入源」だ。僕は、自分の中に3つの条件を打ち立てた。

  1. 在宅でできること(子供のそばで作業したい)
  2. 自分のペースで進められること(時間的制約が少ない)
  3. 続ければ資産になるような将来性があること

この3つの条件で、もう一度情報をふるいにかけていく。そして、何度もスクロールした指が、あるキーワードの上でぴたりと止まった。

「物販」

正直、最初のイメージは良くなかった。「転売ヤー」という言葉が頭をよぎる。しかし、調べていくうちに、その本質は全く違うことに気づかされた。

■解説②:数ある副業の中で「物販」が持つ可能性

プログラミングやデザインといった「スキル習得型」の副業は、一度スキルを身につければ強力な武器になりますが、習得までに相応の時間と努力が必要です。

一方で「物販」は、「安く仕入れて、高く売る」という、商売の最もシンプルで普遍的な原則に基づいています。これは、特別な専門スキルがなくとも、正しい知識と手順を学べば誰でも再現可能なビジネスモデルです。

  • 再現性の高さ
     需要のある商品を、適正な価格で、売れる市場に出す。この原則は変わりません。
  • 時間と場所の柔軟性
     PC一つあれば、リサーチや発注作業は自宅の好きな時間に行えます。
  • 資産性
     育てた商品ページやショップの評価は、継続的な売上を生む「資産」となり得ます。

もちろん、簡単ではありません。しかし、地に足の着いた「商い」であり、自分の頑張りがダイレクトに結果として返ってくる。学歴も、特殊なスキルも持たない僕のような人間でも、唯一挑戦できる道筋かもしれない。

暗闇の中に差し込んだ一筋の光」

「これだ…」

深夜のキッチンで、僕は一人呟いていた。それは、暗闇の中に差し込んだ一筋の光のように思えた。

まだ、何をどうすればいいのか全くわからない。それでも、ただ不安に怯え、ため息をつくだけの日々はもう終わりにしよう。自分の手で、家族の未来を切り拓くんだ。

僕は飲み干したビールの缶を強く握りしめ、静かな決意とともに、新しい世界の扉を開くための第一歩を踏み出した。