販売において「在庫回転率」が重要だということは知っていても、どのように活用すればいいのかいまいちわからない…そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、在庫回転率についての計算方法や利用するメリット、改善方法をご紹介します。
目次
在庫回転率とは
在庫回転率とは、商品の在庫がどのくらいの割合で入れ替わっているかを示す指標です。2.4回/月、10回/年などのように「回数/期間」という形で表記するのが一般的です。
在庫回転率が高ければ商品の売れ行きが良い、低ければ売れ行きが悪いというように、自社の在庫が適正な数に保てているかを客観的に判断することが可能となり、在庫リスクを減らし、販売機会の最大化につながります。
適正在庫と在庫回転率
在庫回転率を把握することは、適正在庫を維持することに繋がります。適正在庫とは、商品販売をする際に抱える在庫の数として推奨される在庫数のことです。
在庫が多く、過剰在庫になってしまっている状態だと倉庫の確保や在庫の管理にコストがかかります。また、使用期限や消費期限のある商品や季節物の商品の場合には売れなくなるリスクがあります。
逆に在庫が少ないと、品切れを起こし機会損失を生む可能性があります。
現在の在庫回転率とあるべき在庫回転率を把握することで、適正在庫を維持することができるのです。
在庫回転率を把握する5つのメリット
在庫回転率を適正に保つことは、商品販売でどのようなメリットがあるのでしょうか。計算の仕方を詳しく理解するモチベーションを上げるためにも、在庫回転率を使いこなすと得られるメリットを一通りチェックしておきましょう。
メリット1.在庫リスクを低減できる
在庫回転率を計算すると適正在庫の管理ができるようになり、在庫リスクを低減できます。過剰在庫な状況になっているときには在庫回転率が低くなるため、数値を確認するだけで在庫数を減らす方針を立てることが可能です。過剰な在庫を抱えていると管理コストがかかり、場合によっては使用期限が切れて廃棄処分をしなければなりません。必要最低限の数まで在庫を減らしてコスト削減を目指すのに在庫回転率が役に立ちます。
メリット2.商品のニーズや売れ行きを評価できる
在庫回転率は個々の商品に対して算出できる指標です。そのため、在庫回転率は商品ごとのニーズや売れ行きを評価する指標としても有効です。在庫回転率が高い商品と低い商品では、在庫回転率が高い商品の方が売れています。
在庫回転率を使えば売れ筋商品を見つけて在庫数を増やしたり、関連商品を新入荷したりする戦略を立てられるでしょう。また、在庫回転率が極めて低く、売れていない死に筋の商品があったときには在庫を処分して商品そのものを入れ替えてしまう方針も立てられます。
メリット3.適正在庫の予測が可能になる
在庫回転率を一定期間ごとに算出しておくと、適正在庫の予測もできるようになります。一定数の商品を入荷しているにもかかわらず在庫回転率が高くなっている場合には需要が上がっているため、将来的にもっと売れるようになると期待できます。在庫数を増やしておかないと在庫切れを起こすリスクもあるので、早めに仕入れ数を増やしておくのが良いと考えられます。
逆に、在庫回転率が低くなっている場合には需要が低迷していると考えることが可能です。入荷数を減らしたり、止めたりして調整をした方が良いと判断する根拠になります。需要と供給のバランスを考えて適正在庫を将来にわたって維持するのに在庫回転率は役に立つ指標となっています。
メリット4.店舗の設計に生かせる
実店舗やECサイトの設計をするときにも、在庫回転率が参考にできます。
店舗に商品をどのようにして配置するか、顧客や従業員の動線をどんな形で設計するかは売上にも販売数にも業務効率にも大きな影響があります。
在庫回転率が高い売れ筋商品や、在庫回転率が伸びている人気上昇中の商品は店舗の入り口に置いて集客に使うという戦略を立てられます。店舗と倉庫をつなぐ搬入口の近くに在庫回転率の高い商品を置くと、従業員の動線が短くなって品出しの負担を減らすことが可能です。
ECサイトでは在庫回転率の高さに応じてセールスプロモーションの戦略を考えられます。売れ行きが良くて在庫回転率の高い商品をサイトのトップに出してさらに売上アップを目指すことも、在庫回転率が低くて売れ行きが悪い商品のバーゲンセールを実施して販促することも可能です。在庫回転率をマーケティングにおける重要指標として活用していくと顧客への多彩なアプローチができるようになります。
メリット5.倉庫レイアウトの最適化ができる
在庫回転率を活用すると倉庫のレイアウト設計も最適化することが可能です。在庫回転率が高い商品は店舗の出入口に近い場所に保管するように倉庫のレイアウトを設計すると、動線が最適化されて業務効率が向上します。
また、在庫回転率の変動が大きい商品の保管場所も工夫すると効率的に倉庫管理ができます。例えば、売れ行きに季節性がある商品を取り扱っている場合には、季節に応じて倉庫レイアウトの変更をルーチンでおこなえるようにするのが合理的です。冬に売れるストーブ、春先に売れる空気清浄機、夏に売れる扇風機の取り扱いがあるなら、在庫回転率を参考にして売れ行きが伸びてきたら保管場所を入れ替えると搬出が容易になります。
在庫回転率の計算方法
在庫回転率を計算するときには、商品在庫の個数または金額のどちらをベースにするかを選ぶ必要があります。計算の考え方は基本的に同じですが、適正在庫数の管理とファイナンスのどちらを重視するかによって、個数と金額のどちらをベースにすべきかが異なります。ここではそれぞれの計算の仕方を具体例と併せて紹介するので参考にしてください。
個数ベースでの在庫回転率の計算方法
適正在庫を管理するために在庫回転率を用いるときには、個数に基づいて計算するのが一般的です。個数ベースでの在庫回転率は以下の計算式で算出できます。
在庫回転率=(一定期間における)出荷数/平均在庫数
出荷数は一定期間において倉庫から出庫された在庫数です。平均在庫数は同じ期間における在庫数の平均値で、入荷数と出荷数のバランスによって決まります。日々の在庫数が記録されている場合には単純平均によって計算可能です。日々の在庫管理をしていない場合には、期間の初日と最終日における在庫数を平均することで平均在庫数を求めるケースもあります。
個数ベースでの在庫回転率の計算例
個数ベースでの在庫回転率を具体例に基づいて計算してみましょう。1ヶ月ごとに適正在庫の見直しをしているケースを想定します。この場合には月間の出荷数と月初の在庫数、月末の在庫数から以下のようにして在庫回転率を計算することが可能です。
(例)
月間の出荷数=200個
月初の在庫数=100個
月末の在庫数=60個
平均在庫数=80個
在庫回転率=200/{(100+60)/2}=2.5回/月
金額ベースでの在庫回転率の計算方法
ファイナンスの目的で在庫回転率を利用する際には金額に基づいて計算するのが適切です。金額ベースの在庫回転率は以下のようにして算出します。
在庫回転率=(一定期間における)売上原価/平均在庫金額
売上原価は期間中に出荷された在庫の金額の合計値です。平均在庫金額は期間中に抱えていた在庫の金額を平均化したものです。売上原価と平均在庫金額は注目している期首と期末における在庫金額、期間中に入荷した在庫の原価に基づいて以下のようにして計算できます。
期首と期末における在庫の差額=(期首の在庫金額-期末の在庫金額)
売上原価=期間中に入荷した在庫の原価+在庫の差額
平均在庫金額=在庫の差額/2
金額ベースでの在庫回転率の計算例
金額ベースでの在庫回転率を具体例でどのように計算するのかを見てみましょう。四半期ごとの決算書の作成のために在庫回転率を求めたい場合を想定します。この場合には四半期の期首と期末における在庫金額、期間中の入荷在庫金額から以下のようにして在庫回転率を計算できます。
(例)
期首における在庫金額=100,000円
期末における在庫金額=160,000円
期間中の入荷在庫金額=90,000円
期首と期末における在庫の差額=60,000円
売上原価=150,000円
平均在庫金額=30,000円
在庫回転率=5回/四半期
在庫回転率の適正水準
扱う商品や規模によって適正水準は変わってきますが、ここでは一般的な目安として、1年間における在庫回転率の適正水準をご紹介します。
・24回以上/年
24回以上の在庫回転率であれば、優秀な水準です。商品の在庫が半月で1回転しており、効率よく売り上げていると言えます。
・12~23回/年
標準的な在庫回転率です。12回であれば1ヶ月で1回転している計算になります。
・6~11回/年
6~11回であれば、在庫管理を見直す余地があります。顧客のニーズを分析したり、生産量や仕入量を調整したりして、在庫回転率の改善を目指しましょう。
・5回以下/年
5回以下は、改善が必要な数値です。売れる見込みがない「不良在庫」を抱えている可能性があります。売れない商品が劣化したり、在庫保管にかかる費用がかさんだりするリスクがあるため、早めの対応が望ましいでしょう。
在庫回転率の目安は商品の種類や規模によっても異なります。例として、年に1回まとめて仕入・製造する商品などを扱えば、在庫回転率も低くなります。そのような特殊な商品でなければ、一般的な数値である12回~24回程度におさめることをおすすめします。
在庫回転率をあげる5つの方法
在庫回転率を向上させることで適正在庫を保てるようになるだけでなく、無駄なコストを減らしつつ、売れ筋商品を常に維持できる状況を整えられます。
では、在庫回転率をあげるにはどのような方法が効果的なのでしょうか。ここでは、在庫回転率の向上を目指すうえで役に立つ考え方を紹介します。
方法1.在庫回転率の目標と進捗を管理をする
在庫回転率をあげるには、まず目標を設定して管理するのが重要です。どのくらいの在庫回転率が適正かは商品によっても、経営方針によっても異なります。基本的には12~24回/年をベースとするのが良いですが、状況によって変更していきましょう。
(例)
・いまよりも大きな売上高を目指すため、どうしても多く在庫を抱える必要があるため、在庫回転率の目標はやや低くする。
・利益率の小さい商品を扱っているため、在庫回転率の目標を高く設定する。
市場や競合他社の状況によって最適な在庫回転率が変わることもあるため、定期的に目標の見直しをして常に適正な数値を目指すように心がけましょう。
方法2.商品の仕入れ・生産を見直す
在庫回転率が高い時と低い時では、当然ながら仕入れ・生産すべき頻度や数量が異なります。
在庫回転率が高い時は、品切れを起こさないように仕入れ・生産の頻度や数量を上げる必要があります。一方で、在庫回転率が低い場合は過剰在庫となることを防ぐため、仕入れ・生産の頻度や数量を下げるとよいでしょう。
原料調達との兼ね合いや契約先との付き合いの影響で在庫の調整に時間がかかることもあるので、在庫回転率を常にモニタリングして、早めにアクションを取るのがポイントです。
方法3.販売価格を見直す
在庫回転数が思うようにあがらない場合、思い切って商品の価格を安くするのも有効です。不良在庫は値下げして売り切るか処分しなければいけない日が来ます。価格を下げて売り切ることで、期待した売り上げは下回りますが、資金を回収し、次の仕入れにつなげることができますので、現在の価格で売れないものは早めに価格を見直すことが重要です。
方法4.販路を増やす
販路を増やせば、新たな顧客層にリーチできます。ECサイトであれば、Amazonや楽天市場、Yahooショッピングなど複数のモールに出店することがおすすめです。
モールによってそれぞれ異なる顧客層に訴求でき、受注が増え、在庫回転率の上昇も期待できます。複数モールの利用により、メンテナンスやサービス終了といった事態に対しても備えられ、リスク分散につながるというメリットもあります。
方法5.リードタイムの短縮を図る
リードタイムとは、受注してから商品を顧客に届けるまでの時間です。ネットショップでの商品販売では特に重要な観点で、注文をした顧客がすぐに商品を手に入れられると満足度が高まります。リードタイムが短くすることで顧客がリピーター化する可能性が高まるだけでなく、口コミによる認知度や人気の向上も期待できます。顧客からの注目度が高まることで自然に受注数が増えていき、在庫回転率があがっていくでしょう。
まとめ
在庫回転率は各商品の適正在庫を維持するうえで重要な指標です。
まずは一般的に正常とされている在庫回転率を設定したうえで、自社の利益や在庫状況を見て商品ごとにあった在庫回転率を設定し、定量的に評価ができるようにしていくとよいでしょう。
在庫回転率をあげるための販路を増やすアプローチとして、「クロスマ」のようなツールを利用するのもおすすめです。
クロスマには
・在庫管理、自動調整機能
一方のモールで注文が入ったときにもう一方のモールの在庫数を自動で減らすことができる
・ワンクリック商品ページ作成機能
だれでも簡単に商品ページ作成ができる
・自動出荷機能
連携倉庫に自動で出荷指示し、メールも自動で配信する
といった機能がついているため、人手や時間に制限がある会社でも、簡単に複数販路での販売を行うことができるようになります。
販路を増やすのは在庫回転率の上昇とって非常に重要なアプローチですので、ぜひご検討ください。
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