連載企画【第7話】終わらない価格競争:相乗り出品の限界と「脱・転売」の決意

FBAを導入した僕のビジネスは、翼を得たかのように加速した。発送作業から解放されたことで、リサーチや販売戦略を練る時間に集中できるようになったのだ。売上は面白いように伸び、月商は30万、50万と右肩上がりに増えていった。

しかし、成功の蜜は長くは続かなかった。新たな敵が、静かに、しかし確実に忍び寄っていたのだ。

僕が苦労して見つけ出した収納ケースの商品ページに、ある日からポツポツと他の出品者が現れ始めた。僕と同じ商品を、同じページで販売する**「相乗り出品」**だ。出品者が増えれば、お客様の目に留まる「カートボックス」を獲得するために、価格を下げるしかなくなる。

最初は「10円くらいなら…」と始めた値下げは、ライバルが増えるにつれてエスカレートしていく。毎日何度もライバルの価格をチェックし、1円単位で値下げで対抗する。熾烈な価格競争の末、あれだけ緻密に計算した利益率は、見る影もなく削り取られていった。

「これじゃあ、会社で営業成績を気にするのと何も変わらないじゃないか…」

常にライバルの動向に怯え、売上が落ちればまた新しい商品を探し続ける。終わりなきラットレース。単純に商品を横流しするだけの転売モデルの限界を、僕は痛感していた。この消耗戦から抜け出さなければ、いつか必ず潰れてしまう。

どうすれば、この不毛な戦いを終わらせられる?

答えは一つしかなかった。「誰にも真似されない、自分だけの商品を作ること」。

僕は、次なる一手として、「OEM(オリジナル商品開発)」への挑戦を決意した。

■解説:価格競争から抜け出す唯一の道、「OEM」とは?

 

Amazonの「相乗り出品」は、すでに存在する商品ページに出品するため手軽ですが、構造的に価格競争に陥る運命にあります。なぜなら、商品に「差別化」の要素がないため、お客様は価格でしか判断できないからです。

この消耗戦から抜け出すための最も強力な戦略が「OEM(Original Equipment Manufacturing)」です。

OEMとは?
 他社(この場合は中国の工場)に、自社ブランドの製品を製造してもらうことです。
 既存の商品をベースに、ロゴを入れたり、色や素材を変えたり、付属品を追加したり、オリジナルのパッケージを作成したりします。

なぜ価格競争から脱却できるのか?
 OEM商品は、あなただけの「オリジナル商品」です。そのため、Amazonに新規で商品ページを作成し、独占的に販売することができます。
あなたの許可なく、他のセラーが相乗りしてくることはありません。価格競争は起こらず、自分で価格決定権を握ることができるのです。

これは、単なる「転売」から、自分のブランドを育てる「メーカー」へと進化する、決定的な一歩なのです。