「脱・価格競争」――。その一心で、僕は自分だけのオリジナル商品開発(OEM)に挑むことを決意した。
ベースに選んだのは、あの価格競争に苦しんだ収納ケースだ。僕は、その商品ページに書き込まれたレビューを、それこそ一字一句、印刷してマーカーを引くほど読み込んだ。「もう少し大きいサイズが欲しい」「内側に仕切りがあれば便利なのに」「この色が安っぽい」。そこには、お客様のリアルな不満と要望が溢れていた。これこそが宝の山だった。
僕はそれらの声を元に、商品の改善点をまとめた簡単な仕様書を作成。代行業者を通じて、複数の工場に交渉を開始した。しかし、現実は甘くなかった。「その程度の改良なら、最低でも3000個からだ」「新しい金型が必要だから、金型代で50万円かかる」。小ロットでのオリジナル改良という僕の願いは、ことごとく打ち砕かれた。最低注文数(MOQ)と初期費用という、巨大な壁が目の前に立ちはだかる。
何度も心が折れそうになった。しかし、諦めきれなかった。粘り強く交渉を続けるうち、ある一社の工場が「君の熱意はわかった。まずはサンプルを作ってみよう」と手を差し伸べてくれたのだ。
次はブランド作りだ。僕は自分の想いを込めたブランド名を考え、クラウドソーシングサイトでロゴデザインを公募した。数々の提案の中から、自分のイメージにぴったりのデザインを選び、それを使ってオリジナルのパッケージもデザインした。
そして数ヶ月後。ついに、すべての想いが詰まった最初のサンプルが、国際便で僕の手元に届いた。
箱を開けた瞬間、息を呑んだ。そこに在ったのは、僕が頭の中で思い描いていた、まさにそのものだった。既存品より一回り大きく、内側には要望の多かったメッシュポケット。安っぽさのない、深みのあるネイビーの色合い。そして、パッケージの中央には、僕が作ったブランドのロゴが誇らしげに輝いていた。
自分のアイデアが、国境を越え、工場の技術と結びつき、今、一つの「商品」として目の前にある。僕はそのサンプルを、ただ震える手で撫続けることしかできなかった。これは単なるモノじゃない。僕だけの城の、礎となる最初の一個だった。
■解説:OEM(オリジナル商品開発)の具体的なステップ
OEMは単純転売よりも難易度が高いですが、成功すれば価格競争から解放され、大きな利益と資産を築けます。
- ベース商品選定と改善点の洗い出し
Amazonで既に売れているノーブランド品をベースに、レビューを徹底分析し「お客様の不満点」を「改善点」としてリストアップします。 - 工場交渉
輸入代行業者を通じて、仕様書を元に工場と交渉します。最低注文数(MOQ)や単価、納期、支払い条件などを詰めていきます。複数の工場と相見積もりを取るのが基本です。 - ロゴ・パッケージ作成
ブランド名を決め、ロゴをデザインします。パッケージや取扱説明書も、商品の付加価値を高める重要な要素です。 - サンプル発注と修正
必ずサンプルを発注し、品質や仕様を自分の目で確認します。修正点があれば、工場にフィードバックして改善してもらいます。 - 本発注と商品ページ作成
サンプルに納得できたら、本発注を行います。同時に、Amazonで新規商品ページを作成します。売上を左右する商品写真は、プロに撮影を依頼することも強く推奨します。



